http://kumanichi.com/syatei/201205/20120513001.shtml
「安全、安心の地」への避難
2012年05月13日
 

 東日本大震災で発生した福島第1原発事故による放射能汚染を恐れ、伊豆半島の付け根の静岡県函南[かんなみ]町から、1歳5カ月の一人娘を連れた30歳前後の夫妻が菊池市に避難してきた。

 夫妻によると、熊本を選んだ理由は「放射性物質の降下値が全国一低かったから」。放射性物質の飛来に加え、静岡県島田市が「震災がれき」を受け入れたこともあって、被ばくへの不安が募り、移住を決めた。

 東北の被災3県からかなりの距離がある静岡では、夫妻の不安感をなかなか理解してもらえない面があったという。それが熊本では「皆さん、優しく受け入れていただき、子どもの将来を心配する思いも共有してもらえる。どこへ行っても本当に親切で、救われます」と安堵[あんど]の笑顔を浮かべる。

 熊本県が把握している他県からの県内避難は133世帯、315人(3月末現在)。このうち東北被災3県以外からも、千葉や東京、神奈川など関東地方を中心に50世帯、137人が移ってきた。放射能汚染拡散への不安から、居住地を離れざるを得ないと決断したのだろう。

 「やがて熊本は安全、安心の地として、再評価される時が来る」-。放射能問題に関する講演会で聞いた言葉である。その後に静岡からの避難家族と知り合い、当たり前として意識さえしなかった日常のありがたさを再認識したことだった。

 放射能の影響や被害については、科学的にも未解明な部分がある。不安感にも個人差があるため、あつれきを生みがちだ。放射能に関する正確な情報提供が何より重要だが、地域や人によって違う危機意識の“温度差”にも心を配りたい。(山本晃)